夜中に目覚め もう一度眠ろうと目を閉じたら 働いていた頃に知っていた顔が くっきりと浮かんできた その顔を消したら次の顔が そしてまた次の顔が 浮かんでくる 10年前から働いていないので どの顔も10年以上前に知っていた顔だ 明るい顔 暗い顔 輝いた顔 くすんだ顔 女の顔 男の顔 年老いた顔 若々しい顔 黒い顔 白い顔 褐色の顔 土色の顔 誇り高い顔 狡賢い顔 優しい顔 とっつきにくい顔 真っ直ぐ立った顔 少し傾いだ顔 魅力的な顔 苦労がにじみ出た顔 いかつい顔 ふっくらした顔 大きな顔 小さな顔 入口で見た顔 食堂で見た顔 助けてくれた顔 いつも避けていた顔 笑いかけて来る顔 頼みごとをしてくる顔 会議で見た顔 廊下で見た顔 一緒に歩いた顔 一緒にコーヒーを飲んだ顔 一緒に食事をした顔 一緒に仕事をした顔 そうだ 仕事をしていたんだ 10年間思い出すことのなかった顔が こんなにもたくさん浮かんでくる なんだこの数は? こんなにもたくさん知っていたのか? 消しても消しても浮かんでくる 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔  顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 僕はいったい何をしていたんだろう